Saturday, April 18, 2015

タイ・チェンマイ、チェンライでのキッズゲルニカ

バーン・フワイボン学校
サンシャイン・キッズセンター
サンシャイン・キッズセンター

サンシャイン・キッズセンター
サンシャイン・キッズセンター
バーン・ルアン学校

2015.02 チェンマイ市内から車で約2時間、100キロほど北上したところにあるプラオ郡でコミュニティ図書館ランマイ・ライブラリーを開き、そこを拠点に山間部の本を読む習慣がこれまでなかった人々に本を読む楽しさを届ける移動図書館事業を展開している「Always Reading Caravan(いつでも本読み隊)」という団体があります。代表の堀内佳美さんは、本を楽しむことで、世界への窓が拓けるという楽しさも知ってもらいたい、とここで活動を始めました。ランマイ・ライブラリーは子どもから大人まで楽しめるようにおもちゃや絵本から新聞、雑誌まで蔵書もバリエーションが豊かで、free wifiのサービスもあることから地域の憩いの場として住民が集っています。また、地域に開かれた楽しい場としてもっと多くの人に親しんでもらおうと、お菓子づくりや工作教室など各種ワークショップも開催しています。
 またもう一つ重要な活動としては、プラオからさらに車で2時間ほど山間部へ入ったチェンライ県シップラン村など3か所で、タイ語を母語としないアカ族やリス族といった山岳少数民族の子どもたちにタイ語で就学前教育を行なう教室を建設し、教育活動を行なっています。もし、就学前にタイ語に触れることなく小学校に入学したら、タイ語の家庭環境で生まれ育った他の生徒たちとタイ語で行なわれる授業に付いていけなくなってしまうため、そのことは将来的に高等教育の機会や職業選択の機会にも大きく影響していきます。そのため、タイ語を母語としない山岳少数民族の子どもたちがタイ語で就学前教育を受けられる機会はとても大切なことです。
 今回、就学前教育のキッズセンターとしては3校目となるリス族の集落で、これから建築資材となる泥の日干しレンガからつくる様子も見学できました。今回の作業のリーダーはスペインからのボランティアでした。「Always Reading Caravan」では、「Move Lanna」プロジェクトという、タイ北部のNGOネットワークで連携してボランティア派遣を行なう仕組を持っており、世界中からボランティアとしての滞在を希望する人材と地域の受け入れ先とのコーディネートを担うことで、活動の運営資金の安定を目指しているそうです。
 平和で幸福な日常は一日にして成らず。このような小さな村々からの積み重ねが、人々の交流が平和を築いていく、ということを思いました。

 2015223日から25日の3日間で、ランマイ・ライブラリーがいつも移動図書館で訪問しているチェンマイ県プラオ郡のバーン・ルアン学校、バーン・フワイボン学校、就学前教育を行なっているチェンライ県シップラン村のサンシャイン・キッズセンターで、キッズゲルニカ・ワークショップを行ないました。
 「ピカソという芸術家を知ってますか?」という問いに、なかなか手は挙りませんでしたが、この時点で完成後の展示先が、ベルギーのブリュッセル、イタリアのカラブリア、インドネシアのバリと決まっていたので、子どもたちは自分たちはそこへ行けないけれども、自分たちの描いたキャンバスを世界の人が見てくれる!と大きな期待を胸に参加しました。

223日 チェンマイ県プラオ郡 バーン・ルアン学校
 小学5年生から中学3年生まで、他の教科に差し障りのないクラスの20名が参加しました(小学5年生1名、6年生1名、中学1年生5名、2年生10名、3年生3名)。
午前中に構想を皆で相談し、その後チョークで下絵を描き、色塗りをし、午後4時頃には何とか下絵全体の色が塗り終わりました。
 「平和」をテーマに描いてみようというと、どうしてもわたしたちが日本から訪問しているために、日本とタイの友好を描きたい気持ちがまず大きいようでした。「平和ってどういうとき感じる?プラオってどういうところ?家族や友だちと過ごす時間が平和ってことじゃない?」と、教科書的な「平和」のイメージから、より身近なイメージの中で彼らがどういう環境で暮らしているのかということを、表現したいようにしてもらいました。地元特産のフルーツである竜眼の畑や、キャンバスの右上、黄金の仏塔の上空にはタイのお祭りで見られる美しい夜空の光景の一つ、熱気球のように火をつけて空へ飛ばすスカイランタンが描かれています。タイの民族衣装とともに描く、日本の着物姿など、描きたいけれどもイメージがつかめないものは、インターネットで検索をし、プロジェクターでスクリーンに映しながら、描くモチーフを検討していました。
 凝った色彩の絵画表現を試行錯誤する生徒もいて、短い時間でもっと続けたいような物足りなさもありながら、楽しく仕上げられたようでした。ワークショップのためにいつもの移動図書館はなかったため、残念がっている小さな学年の子どもたちの姿もありました。

224日 チェンライ県シップラン村 サンシャイン・キッズセンター
 アカ族の集落の3歳から6歳までの7名の子どもたちが参加しました。
舗装されていない山道を越えたところの傾斜地の高床式の家屋の集落の中で、キッズセンターは泥のレンガで建てられています。アカ族の先生がタイ語とアカ語の通訳をしてくださり、アカ語とタイ語の歌で歓迎してくれました。
 絵筆を持って、絵の具で絵を描くのは初めての経験です。そのため、前日プラオ郡の小中学生が仕上げた絵の上に、まずは鉛筆で下絵を描き、花や自画像など描きたいものを自由に描き加えました。午後はお昼寝の時間ということで、お昼の時間までの短い時間でしたが、初めての体験に皆興奮しながら、一生懸命描いてくれました。

225日 チェンマイ県プラオ郡 バーン・フワイボン学校
 小学2年生の16名が参加しました。
 町から山間部という2日間のワークショップリレーのバトンを引き継ぐ形で、日本大使館チェンマイ総領事藤井氏が見学される中、午後90分ほどのワークショップで、まずは鉛筆で下絵を描き、空や里山の風景を絵筆で自由に書き加えました。日本の国旗という認識がなかったようで、前々日に描かれた友好の印の日の丸にも、子どもたちのサインが加わるという微笑ましいハプニングもありました。

最後に今回参加し、温かく迎えてくださった学校の先生方、生徒の皆様、短期間でコーディネートしてくださった、「Always Reading Caravan」の堀内さん、ピンさん、ブンさん、ドライバーとして来てくださったノンさん、チアンさん、そして初顔合わせながらワークショップのサポートとして参加してくださったチェンマイ大学美術学部に留学中の野田さんに心より感謝申し上げます。

Always Reading Caravan

Move Lanna

文責:本間順子